ある人が亡くなったとき,その人(被相続人)の遺言書がない場合,被相続人の遺産は,民法で定められた法定相続人が,民法で定められた割合(法定相続分と言います。)に従って承継します。
※ 法定相続人や法定相続分については,財産を引き継ぐのは誰? をご参照ください。
もっとも,共同相続人の中に,被相続人の財産の維持又は増加に「特別の寄与」をした者がいたとき,その「特別の寄与」を考慮してその者に遺産の中から相当額の財産を取得させる制度が存在します。
これを「寄与分」といいます。
寄与分の制度は,共同相続した財産を分割する際,財産の維持や増加に特別の寄与をしたことに対する利益を還元させるべきとの考慮と,被相続人に対して特別の寄与をした相続人に対し,具体的相続分を決定するにあたり寄与を考慮することで各共同相続人間の公平を図るべきとの考慮に基づいて設けられた制度といわれています。
それでは,どんな場合に寄与分が認められるのでしょうか。
⑴ 特別の寄与であること
まず,寄与分として考慮されるためには,その寄与が「特別の寄与」であることが求められます。
これは,被相続人との身分関係に基づいて通常期待される程度を超える特別の貢献をしたことが求められるとされています。
例えば,夫婦間には協力扶助義務(民法752条)が,親族間には扶養義務(民法877条1項)が存在するため,これらの義務の範囲内の行為は特別の寄与にはならず,通常期待される程度を超えた寄与でなければ認められないことになります。
次に,「特別の寄与」といえるためには,寄与に対して対価を受けないこと,つまり無償であることを要するとされています。
⑵ 被相続人の財産が維持又は増加したこと
さらに,相続人の行為により「被相続人の財産が維持又は増加したこと」が求められます。
単なる精神的な支援だけでは寄与分として認められません。
民法では,寄与分の具体例として①被相続人の事業に関する労務の提供,②被相続人の療養看護,③被相続人の事業に関する財産上の給付,④その他の方法を挙げています(民法904条の2第1項)。